東京地方裁判所 昭和47年(行ウ)34号 判決
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〔判決理由〕<証拠>によれば、本件不動産について、本件仮登記がなされた後に、昭和四二年二月二三日受付甲区三番仮差押(登記名義人株式会社富士銀行)、同年四月二六日受付甲区四番仮差押(登記名義人同栄信用金庫)、昭和四四年一一月七日受付甲区五番任意競売申立(登記名義人芝信用金庫)および昭和四二年二月一四日受付第四、七七八号停止条件付賃借権設定の仮登記に基づく昭和四五年四月一四日受付乙区四番賃借権設定(登記名義人馬島力)の各登記がなされていることが認められる。
ところで、法一〇五条は、仮登記に基づく本登記がなされた場合には法七条二項によつてその本登記の順位は仮登記の順位によるものとされ、仮登記後本登記がなされるまでの間において本登記義務者の処分行為によつて第三者の取得した権利は本登記の内容の実現と牴触する範囲でその効力を失うため、仮登記に基づく本登記をするに際し、右のような中間処分によつて取得された第三者の権利が存する場合における右権利の登記の整理方法に関する手続規定である。そして、その場合、法一〇五条二項により、登記官は登記簿に本登記の記入をするときは右第三者の権利の登記を職権で抹消することを要する旨定められた反面、形式的審査権を有するにとどまる登記官に右第三者の権利の登記が抹消されるべきものであるか否かの実質的判断を免れさせるとともに、右第三者に自己名義の登記が抹消されることに対する異議を主張させる機会を保障するため、法一〇五条一項は、法一四六条一項を準用して、所有権に関する仮登記に基づく本登記を申請する場合には、その申請書に登記上利害関係を有する第三者の「承諾書」または第三者に「対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本」を添付することを要する旨定めたものにほかならない。
右に述べた法一〇五条の趣旨に鑑みれば、法一〇五条一項で準用する法一四六条一項にいう仮登記の本登記につき登記上利害の関係を有する第三者とは、当該仮登記後になされた権利の登記で、かつ、その権利が本登記内容の実現と牴触する場合におけるその登記の名義人で本登記の申請義務者以外のものを指称し、その権利の種類を問わないから、単に所有権に限定されず、地上権、永小作権、地役権、先取特権、質権、抵当権、賃借権はもとより、仮差押、仮処分、強制競売または任意競売申立てのごとく法一条の「処分の制限」の登記の名義人に当るものも包含するものと解される。
これを本件についてみれば、本件不動産について本件仮登記後になされた前記各登記のうち、乙区四番賃借権設定登記における右賃借権登記の名義人馬島力ならびに甲区三番、四番の各仮差押の登記の名義人株式会社富士銀行および同栄信用金庫がいずれも法一四六条一項、一〇五条一項にいう登記上利害の関係を有する第三者に当ること明らかである。
ところが、甲区五番の任意競売申立ての記入登記は、前掲甲第一号証によれば、本件仮登記に先立つ昭和三九年一月七日受付乙区一番根抵当権設定登記および昭和四〇年九月二〇日受付乙区二番抵当権設定登記に基づく任意競売申立てによりなされていることが登記簿上明らかである。そうすると、乙区、一、二番の抵当権設定登記の順位は、本件仮登記の順位に優先するから、それに基づいてなされた甲区五番任意競売申立ての記入の名義人は、たとえ右記入登記が本件仮登記後になされていようとも、本件仮登記につき本登記承諾義務は負わないと解すべきであり、したがつて、本件仮登記の本登記は、甲区五番任意競売申立ての記入登記を残存したままなされるべきであるから、右記入登記の名義人芝信用金庫は、法一四六条一項、一〇五条一項にいう登記上利害の関係を有する第三者には該当しないといわなければならない。
以上によれば、原告らは、法一〇五条一項で準用する法一四六条一項により、本件登記申請をなすにつき、その申請書に甲区三、四番の各仮差押および乙区四番の賃借権設定の各登記名義人の承諾書またはこれに対抗しうる裁判の謄本を添付することを要するところ、本件弁論の全趣旨によれば、原告らがそれらを添付することなしに本件本登記申請をしたことが認められる。そうすると、被告が本件本登記申請につき、法四九条八号所定の「申請書ニ必要ナル書面ヲ添付セサルトキ」に該当するとの理由でこれを却下した本件却下処分は適法である。
(高津環 牧山市治 上田豊三)